【感想・ネタバレ有】かしこい狗は、吠えずに笑う
皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
UniCosmoです。
昨日の記事で温かくなってきたと書いたら寒くなりましたね。
猛烈に風が強くて引きました。
さて、4連休もラストなので家で映画を見ました。
先週の土曜日に「哀愁しんでれら」という映画を見てきて、久々に魅力的に感じた邦画と出会えたんですよ。
「哀愁しんでれら」公式サイト
「哀愁しんでれら」予告
予告での雰囲気と音楽に惹かれ、興味MAXになって気になってたんですよね。
「哀愁しんでれら」の感想も吐き出したい…多分近いうちに…
この作品の監督が「渡部亮平」さんという監督で、33歳と新進気鋭の若手監督なのです!
「こんなに面白い作品久しぶりだし、監督の過去作品見たい!」となってしまった私は、初長編作品である「かしこい狗は、吠えずに笑う」の存在を知りました。
かしこい狗は、吠えずに笑う 渡部亮平監督
「かしこい狗は、吠えずに笑う」公式サイト(自主作品なのでfc2なのも面白いところ)
「かしこい狗は、吠えずに笑う」予告
予告見たときは「青春映画とか百合恋愛かな?」と思っていました。半分当たってました。もう半分は…
あらすじ
とある女子高校。周囲からのいじめを受けていた二人の女子高生。
ブルドックのような「容姿」が原因でいじめられている、熊田美沙。
対照に可愛いがために「嫉妬」が原因でいじめられている、清瀬イズミ。
また、彼女たちのクラスの西尾アヤは行方不明となっています。
ある日、美沙が図書室で勉強していると、イズミが数学の明日行われるはずのテストを持ってきて二人の交流が始まります。「本物?」と聞く美沙、「フヘヘ」と笑顔を浮かべるイズミ。
お互いに、見た目による原因でいじめられ、悲しい思いをしてきたことを理解し合える仲になり、どんどんと絆や友情が深まっていくのでした。
そんなある日イズミは、理科室で美沙が育てていた金魚の水槽を掃除しようとし、誤って割ってしまうのでした。イズミは"水槽を割ってしまったこと"をたくさん謝りますが、金魚は亡くなってしまい、二人の関係は微妙なものになっていきます…
感想
渡部監督、すげええええええ!
本作、監督・脚本・編集を渡部監督が行っております。
しかも、予算が150万円という低予算での自主製作映画なのですが、圧倒的完成度の高さにビックリしました。
あと、ピアノのBGMが最高にマッチしてます。
もの悲しさ、美しさもすべてマッチしてます。
さて本編の内容の感想ですが、
前半、美沙とイズミが出会ってからどんどん仲良くなって一緒に過ごしていくシーンがとても青春してて、いじめっ子なってどうってことない!って感じがこれでもかってくらい清々しいものでした。
特に自転車に乗って走っていくシーンはとても素敵でした。まじ青春。
あとは、「イズミが美沙に赤色のペディキュアを塗る」シーンや、「ノーパン校内ダッシュ」のシーンなんかも二人の友情が高まっているのを感じました。
ペディキュアを塗るシーンですが、イズミは青色のペディキュアを塗って二人の色がでてきてて微笑ましいなと思って見ていました。
が、金魚の水槽を割っってしまったあたりから不穏になっていきます。
作中でも語られますが、イズミは金魚を殺してしまったことは謝っていないんです。
このシーンの後からイズミが命令口調になったり、闇の部分が露になってきます…
ここからの感想はネタバレになるので、別項目とします。
まとめはこちら
ネタバレ有感想・考察
ネタバレがあるぞ!!!
ネタバレ防止のためにしばらくスクロールしてください。フヘヘ。
イズミ、怖い。怖い。
美沙のペット(小鳥のチュン太)を貸せ、というイズミ。
美沙は恐怖を感じてしまい、チュン太を貸してしまいます。
翌日、イズミは弁当を作って美沙に食べさせます。
あ、おかずは唐揚げです!
唐揚げを食べた瞬間にイズミは「チュンチュン」と囁くのです。
みんな思うことは一緒ですよね。
美沙は唐揚げを吐き出します。
まぁ、チュン太じゃなかったんですけどね!!!
唐揚げも元は鳥さんなんだから、チュンチュンだよねというイズミ。
サイコパス出てますよ。
次の日、「ホワイトハウスへようこそ!」と言い、見知らぬアパートへ美沙を連れてくるイズミ。
イズミがトイレに行っている間に、襖が閉まっている部屋が気になって美沙は開けてしまいます。その部屋は悪臭がする部屋でした。
サイコスリラーとかよく見てる人は、察すると思いますが…
まぁ、誰も死んでないんですけどね!!!
しかし、クローゼットの中には、行方不明になっていた西尾アヤが監禁されていました。
こっわ。
そしてアパートに帰宅してきた人、それは、数学教師の栗田だった。
学校のシーンでは引っ込み思案な栗田が描かれているのですが、
ここからの栗田はマジでやばいです。
イズミは、ナポレオンの言葉を再度言います。
「人間を動かす2つのてこは、恐怖と利益である。」
イズミは栗田に「恐怖」を与えて、西尾を監禁する場所「利益」を得ていました。
この「恐怖」なのですが、イズミは栗田とプリクラを撮ったり、栗田が女子トイレを盗撮していることを知っているのでバレたら教師を続けられなくなるといった「恐怖」を与えていました。
そして西尾を監禁していた理由として、美沙をいじめないようにするためお願いしたものの、「イズミってせこいよね」と言われたことにイライラしたというものでした。
この映画の名シーンですが栗田に美沙が理由を聞こうとすると、逆上して
「今、エビ食ってるんだよ!!」
と怒鳴ります。
「哀愁しんでれら」では焼肉のシーンで
「肉なんていいんだよ!!」
って怒鳴るシーンがありましたね。
渡部監督は食事中に怒鳴るシーンが印象的ですね。結構重要なシーンでこれをやるんですよね。面白い。
遅れましたがこの映画のキャッチコピーを紹介します。
「友達、どこまで許せますか?」
ゾワッとしました。
しかも、イズミは叫んだりするシーンはなくて「フヘヘ」と笑うんです。結構なシーンで。
「吠えずに笑う」
タイトルもちゃんと徹底してますね。
後日美沙はまた栗田のアパートへ行きます。
イズミは栗田を殺していました。
殺害事後の部屋を美沙は見てしまいます。
ここからはイズミのターン!!!
「栗田がアヤを襲おうとしてたから、さすがにアヤも可哀そうで止めようとして、つい、つい、刺しちゃった。」
「裏切らなかったんだよね、私の事。美沙には私しかいないもん。」
「美沙、アヤ殺して。」
「いなくなってあんなに笑えたじゃん。」
イズミはチュン太を握ります。
「分かったよ。私がアヤを殺るから、美沙はチュン太を殺って。」
恐怖するアヤ。
「うるさい」「鳥だよ」「静かにしないと次はこっちね(包丁を見せながら)」
「アヤうるさい、だーまーれ、黙れ!」
「そ、よくできました。」
血の噴き出る音。
「一緒に逃げよ。」
「好きなのに、好きなのに、こんなに好きなのに。"親友"でしょ?」
美沙:「包丁を向ける人が親友なわけない!」
イズミはチュン太を叩きつけました。
このシーン10周くらいしました。
色んな感情が詰まってます。エネルギーも。
ここのシーンで流れる音楽も最高。
場面が変わり、少年刑務所の場面へ。
美沙は、ビニール傘で何度もイズミを刺し、殺害していました。
裁判では正当防衛が認められ、無罪でした。
ラスト、学校のシーン
美沙はトイレで化粧をしていました。
「私上手にできたかな、イズミに教わった化粧。」
右目を見ると真っ赤な目。
花瓶で鏡を割り、鏡をみて自分自身にこう言います。
「自分を守る嘘、あんたの武器でしょ」
美沙の両目は青い目になっていました。
このシーンは前半でイズミが化粧していたシーンと構図が同じなんですよね。(青い目を除く部分)
イズミと出会って良くも悪くも美沙は変わったのだと思います。
少なくともイズミの影響を受けてか、イズミと同じ言葉も発しています。
「哀愁しんでれら」でも思ったのですが、渡部監督の監督作品は「赤色と青色」そして「目」がとても印象的なんです。
公式サイトにある以下の画像なのですが、美沙が青、イズミが赤の陰になっています。
影はそれぞれの内面を表すカラーなんでしょうね、
美沙だと携帯やチュン太が青色でしたね。
イズミだと携帯、傘、(降りかかる血)が赤色でした。
ただ、ペディキュアを塗ったときにそれぞれの色が逆転しているのは、お互いの友情が深まったことを表現しているのかなと思ったりしましたが、イズミの影響が美沙に流れてきているのかなと捉えることもできました。
それを踏まえての、化粧シーンなのだとしたら、同様の構図になることもなんとなく分かります。
両目の青は、正当防衛が嘘なのか、イズミの影響が自分の中に入ってきていることが嘘なのか、その両方なのか、はたまた別の意味があるのか。
色々考えてしまいました。
根本変えることを言うかもしれませんが、そもそもこの映画、美沙の調書作成の語りで進んでいることを考えると、
全てが嘘の可能性もあります。
いじめていたアヤを殺すために美沙が全部仕込んだ可能性だってあるわけで。
少なからず、美沙の嘘は自分を守るための武器なので、どこかしらが美沙の嘘であってもおかしくはないと思います。
エンディング後、クラスの風景。
授業中に携帯のバイブ音が鳴り没収される生徒。
美沙はイズミの席に座ってじっとその生徒を見つめているのでした。
新しい「親友」なのでしょうか。
そのシーンで映画は終了します。
まとめ
この映画、「濃い」
濃密な94分間でした。
考察点とか伏線がちりばめられていて、本編1日で3周してしまいました。
「哀愁しんでれら」を見る前でも、見た後でも渡部監督ワールドに浸ってみませんか?
この映画を見た他の人の感想とか意見、考察もめっちゃ気になるところです。
邦画でワクワクしたのも超ひさしぶりでした。大満足でした。ありがとうございました。
ではまた。